投資と言われると、普通は私たちが住んでいる日本やアメリカなどの先進国株や債券をイメージする人が多いと思います。
でも、当然ですが投資先はそれだけではありませんよね。
今回は馴染みのある先進国ではなく、新興国の債券を投資先として考えていきたいと思います。
新興国債券ETFの銘柄
新興国債券ETFには、一つの国を対象にしたものから様々な新興国に分散投資しているものまで、本当に色んな種類があります。
今回は、全世界の新興国に分散投資しているETFである以下の2つを比較していきたいと思います。
上場インデックスファンド新興国債券【1566】
NEXT FUNDS 新興国債券(為替ヘッジなし)【2519】
上場新興国債【1566】 | NEXT FUNDS新興国債【2519】 | |
株価[円] | 48,150(2020/01/10) | 1,063.0(2020/01/10) |
単元株数 | 1 | 10 |
基準価額[円] | 48,513(2020/01/09) | 105,347.00(2020/01/09) |
純資産総額[百万円] | 20,313.00(2019/12/30) | 306.00(2019/12/30) |
決算日 | 01/10, 03/10, 05/10, 07/10, 09/10, 11/10 | 03/07, 09/07 |
分配利回り | 4.51% | 5.33% |
信託報酬 | 0.35% | 0.19% |
為替ヘッジ | なし | なし |
指標 | 円換算したバークレイズ自国通貨建て新興市場国債・10%国キャップ・インデックスに連動 | 円換算したJ.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラスに連動 |
通貨建て | 自国通貨建て | 米ドル建て |
どちらも全世界の新興国債券ETFということで、基本的には似ています。
両者とも、最低取得金額が50000円以下なので気軽に手を出せますね。
分配利回りや信託報酬は若干NEXT FUNDSの方が良いようですが、そこまで大きな差という訳でもありません。
この比較表から分かる両者の大きな違いは「連動する指標」「通貨建て」です。
連動する指標を詳しく見ることで「どこの債券に投資しているのか」が詳しく分かります。
どの通貨建てなのかで「かかってくるリスク」も異なるので、これらについて比較していきます。
それぞれが連動している指標
バークレイズ自国通貨建て新興市場国債・10%国キャップ・インデックス
この指数は、新興国の政府が自国通貨建てで発行した国債市場の動向を表す債券指数です。
ここで名前に「10%国キャップ」という単語が入っていますが、これは指数を構成する各国の構成比率が10%を超えないようにするという意味です。
したがって、ある国がデフォルトやインフレ等を起こして債券の価値が変動したとしても、その国の国債が指数に与える影響は最大10%程度に抑えることができます。
この指数の構成国の情報は、大きい順に以下の通りになります。引用元
韓国(12%), ブラジル(8%), インドネシア(7%), タイ(7%), メキシコ(7%), 中国(6%), マレーシア(5%), イスラエル(5%), ロシア(5%), 南アフリカ(5%), その他(ポーランド, フィリピン, コロンビア, チェコ, トルコなど)
J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス
この指数は、新興国の政府が米ドル建てで発行した国債市場の動向を表す債券指数です。
この指数の構成国の情報は、大きい順に以下の通りになります。引用元
メキシコ(13%), トルコ(12%), インドネシア(11%), ロシア(11%), ブラジル(9%), その他
どちらも投資対象の国は似ていますが、前者の方が各構成国が占める割合が小さいので、よりリスクを分散していると考えることができます。
そして明確に分かる大きな違いとして、
前者は自国通貨建て
後者は米ドル建て
ということが挙げられます。
米ドル建てと自国通貨建て
米ドル建てと現地通貨建ての違いは、債券を発行するときにどこの通貨で発行されているかです。
米ドル建ての債券の場合だと発行元は自国の通貨ではなく米ドルで債券を発行することになり、自国通貨建ての場合は発行元の自国の通貨で債券を発行することになります。
新興国の通貨よりも基軸通貨である米ドルの方が信用力があり、また米ドル建て債券は米国債利回りを基準とするので、自国通貨建て債券よりも利回りが低くなります。
「それなら自国通貨建て債券の方がよくない?」という意見も出てくるかと思いますが、自国通貨建て債券にも大きなリスクがあります。
というのも、自国通貨建ての場合は、その国のインフレ率や政策金利、経済成長率などの影響を受けるからです。
簡単な例で考えてみましょう。
・米ドル建て債券の場合
「100万円分(=1万ドル)貸してください!その代わり1年後に米ドルで5%多く返します!!」
・自国通貨建て債券の場合
「100万円分(=5万トルコリラ)貸してください!その代わり1年後にトルコリラで10%多く返します!!」
と2人から言われたとします。(ここでは100円=1ドル=5トルコリラで計算しています)
一見すると自国通貨建てのほうが利率が5%高いので、こっちの方が良いように感じます。
ですが、円換算したときに本当に5%多くリターンがあるかどうかは、米ドルもトルコリラもインフレ等で通貨の価値が変わらなかった場合に限られます。
もし、インフレでトルコリラの価値が半分になったとします。
米ドルの価値が変わらなかったとすると、1ドル=5トルコリラだったのが1ドル=10トルコリラとなってしまいますよね。
このことを踏まえて2人にお金を貸した場合のリターンを考えると、
・米ドル建て債券の場合
米ドルで5%分多く返してもらうので、1万ドル+500ドル=10500ドルになって返ってくる。
円換算すると105万円。
・自国通貨建て債券の場合
トルコリラで10%分多く返してもらうので、5万トルコリラ+500トルコリラ=50500トルコリラになって返ってくる。
しかし、ドルとトルコリラの為替が変動してしまったので、50500トルコリラ=5050ドルになって返ってくる。
円換算すると50万5000円、
というわけで、米ドル建て貸した方が得だったという結果になってしまいます。
これはかなり極端な例なので、実際にはこんなことになることは無いと思いますが、
自国通貨建てで債券を購入するときには、利率が高い一方でインフレ等のリスクを十分に考慮していくことが重要だと言えます。